レシートの裏に走り書きされた「牛乳、卵」の文字。 598円相当の愛情。 干された洗濯物ごとカーテンが揺れていた。 不器用なりのサボテンの育て方。 水だって腐るってことを知らないみたいに置かれたペットボトル。 かつて花瓶だったそれにはパスタが生けら…
頼んでもないのに期待して、勝手にショックを受けたなどとほざいて、挙げ句の果てには押し付けがましく被害を説いていた。 虚像なんて愛には及ばない。 動画広告のほんの数秒すら待てない、垂れ流しの個人情報。 遡っても全部同じ角度のロボットみたい。 ど…
大事に保管しておいたつもりだった言の葉たちは、実のところ浮遊していて次の日には泡になっていた。 人間の記憶力の曖昧さはもう少し見直されればいいと思うよ創設者。 それともそれだけ悲しみに柔く忘れる事を覚えたか。 記憶領域を体外に増設している怠惰…
爪切りを探していた。 散らかった部屋でその小さな一つを見つけるには、引き出しの中身をすべてひっくり返す必要があった。 小さいことで、多分これは悲しいとかそういう類の感情で、頭の中を蔓延して、でもそれらがどこから来ているのか分からなかったし、…
白い眼の中心で、冷や冷やしているのは凡そ吐き散らした暴言を掬った人間のみで、私はというと、それを知っていながら至って冷静に笑っていた。 誰も彼もから好かれる訳ではないから、一握りの好きでいてくれる人に対しては真摯でいたいだけのつもりであった…
満身創痍で100%の悪意を以て、 憎めた方が少なくとも優しかった、 中途半端に良心なんてものを置いてしまっているから傷ついた顔ひ とつ受理されない。 年齢だとか、性別だとかで、 許されたり許されなかったりすることに対して、 酷く恨めしいと思いながら…
意気込んでいた事象や、待ち望んでいた出来事が、過去になる度に少しずつ死んでゆく心臓。 どれくらい削り取られれば、“私は何者か”を形成できるのか。 未だにその削り華を崩れないように忘れないように、穴の空いた思い出の木箱に入れ続けているというのに…
物腰柔らかそうな中年男性が、 自分の母親を連れて病院へ訪れているのを見た。受付のお姉さんに、ありがとうございます、なんて返しながら。彼の、母親にだけ強く当たる姿を見た。違うから、何度言ったら分かるの、いいから、やるから。優しくなりたかったの…
誰も彼もが夢や希望を追っかけてるワケじゃねぇんだ、うるせーよ。 今、目の前で殴り合いの喧嘩をしろ。 勝った方が正義、負けた方が悪、至極明瞭でわかりやすいじゃないか。 あぁまったく、他人を正しく評価できる能力が欲しいって言った訳さ。 それでいて…
何かを惜しんで綺麗な言葉を今更並べたって、そこまでに費やした破綻した言葉達の所為で、何一つとして正面から真っ当に伺えない。 哀しみの助力をしたのは、それでいて被害者面して、やれ同情、やれ共感、私だってきっとずっと悲しかったんです。 哀願込め…
死にたいなんて感情は凡庸だから、それをただ飼い慣らすことに徹する。 態々語るまでも無い、溶け込んでいるものたち。 聞いてない、誰かの深淵なんて知らないし、そんなの当たり前って、下手くそな笑い方で達観などしちゃって、想像力すら及ばない。 読解力…
私の日常には死の匂いがした。 この人もう死ぬんだろうなって言いながら昼飯を食っていた。 霊安室の隣のトイレで大便垂れ流して、大丈夫ですかって体裁だけで機械音みたいに発音して、痛いって言葉をへぇって笑ってガン無視している。 死が纏っていた。 そ…
鏡月のボトルデザインが変わって、僕は体に優しい天然水、みたいな顔をしていても度数は変わらないから、かわいそう、って言いながら肝臓を痛めつける、暴力反対です。 吐き出しているのが、胃液なのかアルコールなのか愛なのか、分からなくなってからが君の…
一般市民、僕は名もない一般市民、害なんて一切ありません。 テンプレートみたいな笑顔。 しっかり貼り付けて「そうだね」って言う。 客観性が失われていく主観の相討ち。 自分本位でごもっとも、誰も自ら泥水なんかにゃ飛び込まない。 勝手ばっかりしている…
きっと、こういう感情の時に人は怒るんだろうなとか、こういう痛みを感じたときに苦しくて泣くんだろうなとか。 俯瞰的に捉えてどこか他人事で、体外からの刺激と地続きで心臓が寄り添うにしては、余りに楽観的だった。 河川の下流の石のように、幾度も流さ…
罵倒として、死ね、などという無粋な言葉を使わぬようにしている。 それは決して汚い言葉だからとか人に向ける言葉ではないから、などという丁寧さから来ているものではなく。 人を傷つけようとするには愚直過ぎるし、そういう意味合いで使うのならば、もっ…
腹が立っている。 同じ物を何回も落としたりだとか。 机の角に足をぶつけたりだとか。 ほとんど使い切ったトイレットペーパーだとか。 靄って何も見えない雪山で一人倒れても、誰もが存在にすら気付かずに素通りするだとか。 療養病棟で口を開けたまま荒い呼…
自由を欲して身から出た錆。 木が生い茂っていて日が沈んでいたから、落ちてくる屑星を掴めそうだったのに、泥濘に嵌って脳が死んでいた。 刃が刺さった鈍痛から内臓飛び散って漏れ出す泥水。 いつ死んでもいいよって君が言ったのに、寸での所で生かして殺し…
会おうとしたって会えなかったら、そんなのは、あなたの中で死んでるのとおんなじことだよね、っていうのは僕の持論。 感情の起伏に疲れるから、一直線でいたかった。 上るのも、下がるのも、体力の消耗が激しいから、自分の為にならないと、世界を卑下して…
明後日の方向を向きながら、古本で買った太宰治を読んでいた。 行間を読む能力が欠如した果てに、結果ばかり先走って、結局それでって聞くばかりで、分からないでいる選択をしたものから問いかけられている事を解かろうとしない。 で?だから?結局なに? ど…
嫌なことがいつあってもいいように、ポッケの中にチロルチョコを忍ばせとけ、ってエッセイを読んだことがある。 私はチロルチョコの代わりに心にギャルを飼うことにした。 金髪のルーズソックス。 キティちゃんサンダル履いて、パンツ見えそうなくらいのミニ…
「あんまり死ぬのを怖がるとな、死にたくなっちゃうんだよ。」 テレビから流れる夏の海と拳銃。 沈まっていく生と死の彼方に、赤い花弁を散らつかせた。 「ソナチネ」が公開された年に、私はまだ生まれていなかった。 ある人は、人が欲している言葉を発して…
チケット2枚分でお一人様。 なんたって、広々使えるし、荷物だって、置けちゃうし、別に、寂しくなんて、ないし。 青空天井のガチャみたいな、そんな、運試し。 おはよう、今日の運勢は空模様、黄色のハンカチで良いことあるかも。 だから、そう、会えたらラ…
膝を丸めて本を抱えた。 何を犠牲に支払ったか君よ。 何を犠牲に何を得た。 何を天秤にかけて何方を選択した。 渇く、それでも、渇いている。 飢えているのか、枯渇しているのか。 不平等に、残酷に、嘲笑って。 知識ばかり得ていたって、世界はひっくり返ら…
平行でない仕切り。 重さに耐えられなくて歪んだらしい。 陥没するのも時間の問題だった。 苛々させながら自慰行為。 捌け口を探していた。 感情にはじめまして、みたいな、質素な食事。 とうとう人間を手放したらしい。 頭でっかちにばかりなっていくから、…
宇宙から自分を見下ろした。 何の味もしなかった。 夜の海は映えると思う。 少しの寒さが心地良いから燃やした炎を投げ捨てる事にした。 期待しない、期待しない。 何を言っても無駄だから、そんな労力使ってやらない。 私の発言は、私の発言が求められてい…
何を誇らしげに思うか君よ。 何も持っていないから、捨てる物など何も無かった筈だった。 怖くない、腹の足しにもならないものはすべて置いてきた。 愛しき地平線のその先に。 特別ではなく、ありふれた毎日の、明日が来るってそれだけの。 それが当たり前で…
無表情で感情を読み飛ばす指先。 (だから私は何も言わない事にした。) 理解を得られる筈も、吐露して楽になれる筈もないと知ってる。 (だから私は何も言わない事にした。) 喚いて激怒したり泣いて悲しむ事より、飲み込んで黙っている方が傷付かないで済…
感情の吐露。 悲しいとか悔しいとか寂しいとか苦しいとか。 殴って痛いって跳ね返って壊れる。 諦めてしまって呆れてしまってそのまま消化、消化不良の胃液が逆戻り。 慣れきって化粧も落とさず転た寝、明日任せ。 期待しないばかりで間違えない。 またやっ…
負けてばかりの人生でございました。 高校受験は第一志望には受からず、後期で滑り止めの女子高へ。 本当は共学に入りたかったとか、当時の私は嘆いていた。 センターはボロクソで、ここでも第一志望には受からず、大学ではなく短大へ。 私立大学なんて行く…