脳がない!

カリソメの体でしか生み出せないものたち

傾瀉

絶えず、時間と共に色々なものが変わっていく。

景色、季節、匂い、轍、感情、行き先、思考、夢。

普遍的なものがあるとか言う人がいたら、それは嘘だと思う。

永遠が語られる物語の信憑性は欠けるし、そういうものは大抵、フィクションであるか、ファンタジーだ。

明日ある確固たるものなんて何もない。

どこにもそんなもの存在しない。

移ろっていく、大切なものも、大事にしていた感情も、たった今のものでしかない。

今日の味方は明日の敵かもしれないし、明日も笑っていられる保証なんてどこにもない。

 

誰からも求められなくなるくらいなら、誰かの都合のいい人でいる方がマシ。

だから私は君のこと、何も知らないんだね。

君からもらって失える物ひとつ、持ちやしないのだけれど。

だからあの子が、彼から貰ったと嬉しそうに言ったチープなネックレスと共に見せた笑顔が羨ましい、殺したいくらいに。

 

最近よく夢を見る。

夢を見過ぎて、夢が本当で本当が夢であるかのような錯覚に陥る。

さっき話さなかったっけ、あんなこと。

そのお話って夢じゃなかったの。

まったくどっちがどっちなのか分からなくなっている。

頭を使いすぎだって、頭の中で喋ってるんだ。

実在しない人が頭の中に何人も住んでいて、脳内会議が始まったり、どうでもいい会話が過ぎ去っていく。

これはね、でもさ、あのね、それでね。

あぁ、もう、煩いよ、黙ってられないのかい、お喋りも大概にしなよ。

 

難儀な頭をしているもんだ。

平然と通り過ぎることのできる道で躓いて、まともに呼吸もできなくて。

駆け上がった階段はいくつか踏み外しているし、その分いくらか幼くて大人過ぎて、必要なことを取っ払って不要な経験が増えていって、それをバレないように装うので精一杯だ。

ちぐはぐな体で、継ぎ接ぎだらけの心で。

真っ当に、生きた試しなど、あったろうか、そもそも真っ当ってなんなのだろう。

 

何も分からないから夜が待ち遠しい。

沈殿した残渣のように、そこではあらゆる有機物が沈んでる。