脳がない!

カリソメの体でしか生み出せないものたち

万華鏡

Last Judgement、Guignol Theatre、オルクスから渡した唄、ラーグリマに一目惚れ、ルッキオラを部屋に、夢見なアムーレネルテル、勿忘草、零落、蜻蛉の夜、フェリスィダージの悲しみ。

すべて、生み出されては捨てられていく、私のこんな記録の一部のタイトルだった言葉たち。

名状し難い言葉を書いていないと、きっと不安なのだ。

ずっと、バカみたいに数えきれない数の言葉を探しているし、ずっと、本当の意味で代弁なんてしてくれないから裏切られ続けて、まるでヒモに貢いでる女みたいに、それでも、ないよりはマシだった。

 

昨日、友達から入籍しました、のラインが届いた。

次々に掴まれていく幸せと、俗に言われるその真っ当さ、普通と言われる段階。

自分一人で生きてゆける術を持っていると強くなり過ぎるのさ、女も男も。

寂しさだけでは付き合えないし、愛しさだけでは結婚なんてできない。

だから賑わう楽しい街の根底には寂しさが眠っていたりする。

ほら、どうせこうして分かっているのにね、本当は、迷惑かけて頼って見境なく叫んででしか生きていけないってこと。

だからよく行くコンビニの店員に顔を覚えられていて、そのちょっとした挨拶で嬉しくなったりするんだ。

 

医療現場なんかより水商売している方が、もしかしたら本人が隠したい個人情報を目にしていて、その漏洩を委ねられているのではないか、と時折思う。

守秘義務なんてないのに、その塩梅は個々に各々に分別したりしていて、嘘も方便だとはよく言ったものだ。

嘘はその人が本当に隠したいこととか守りたいものとか感情の移ろいとかを如実に示すから可愛い。

だからなんでか嘘をついてる人を見ると優しくしてあげたくなる。

そしてだからこそ惚気を吹聴している人を見ると勿体無いなって思う。

折角君にしか見せなかった表情や言葉だったりするかもしれないのに、その事実を広める事よりも、ひとつの仕草で心なんて簡単に踊るのに。

私はそれで、大好きな人からもらった言葉はいつまでも心の中にだけ留めていようって、何となく気にしてみたりしている。

どうせ、君も私も自分を守るのに必死さ、その点揺るぎ無く同じ者同士で、とんでもなく気が合うじゃないか。

だけどごめんね、君が好きな誰かさんと、どんな言葉を交わしてどんな表情をしてどんなセックスしたかなんて、そこまで聞いていないんだよ。

 

高い金をかけて可愛い寝間着を買っている女の子は、きっと彼氏がいるんだろうなって思って横目で通過する。

私はそれよりも高めのランジェリーを買う方を選ぶ。

一時的な紛い物を身に纏う幸せなんてのは、やっぱり仮染でしかないのだ。

こうしていくつもの小さな選択をして、それが正解なのか誤っているのかも判らずここにいる。

人生は何事をも為さぬには余りに長いが、何事かを為すには余りにも短い、などと山月記では謳っているが、それでなくたって何かを得る為に与えられた時間なんてものはほんのこれっきししかない。

基本的にみんな孤独だって嘆いているから、見ず知らずの人から一切の面倒な手順を踏まなくたって花を供えられている墓場の偉人が羨ましい。

人生を浪費する、こうして、自分の腕でしか自分のことを抱き締めてやれない今でさえ。

それでもなんでか、ラブホのライターは捨てられずにずっと使っている。