新宿の唄
ドクターマーチン履き潰して、片方の紐がどっか飛んでった。
ちっともおしゃれじゃないジャケットで着飾る若者。
剥がれかけたマニキュア溶かして、ささくれだけが目立ってる。
唇の皮を捲るのが癖だったよなぁ。
いつか呼吸をするだけで金がかかる時代がやってくるさ。
それでもカルピスソーダの味だけは変わってほしくないものだ。
ぺって吐き出した生唾だけが踵を嬲っている。
小さい箱ではどこへも運んで行ってくれないね。
新宿の爆破予告で花が散る。
どこもかしこも鳩とゴミでKeep outのラインが引かれる。
アクセル踏みっぱなしで事故ったらしい。
ラインの既読だけつける作業。
電波障害で君からの恋文を受信できません。
泡が弾ける音。
香水からする札束の匂い。
何も言わないでいたら存在しない事になっていた真夜中のリトルボーイ。
羨ましいよ、少しだけ。
昨日も一昨日も、明日も明後日も、君の歩幅は変わらなかった。
消えてしまいそうなのは、そこにいた事実で、感情ごといなくなりたいって夜が叫んでいたから。
世界はちょっとだけだめになるようにできている。