脳がない!

カリソメの体でしか生み出せないものたち

世界滅亡デモンストレーション

台風の所為で、なのか、お陰で、なのか、明日の仕事が休みになりました。
まぁそうだよね、そもそもこんな台風の中、病院に自らの足で来る患者さんなんて、もうそれ元気だよ、と思う。
だからといって、突如として仕事が休みになったわけで、急遽降り注いだ三連休で、別段予定もなければ、動き出すのも億劫で、こんな天気の中どこに行くにも一労力だしな、って、多分結局引き篭もってイマジナリーフレンドと会話しているだけに留まるんだと思う。

 

こういう、震災とか、自然災害の日は、ちょっとだけ生と死が近づいた感じがしてザワつくね。
世界が明日にでも終わるんじゃないかってくらいの、少しの浮遊感というか、いつもの生活から疎外された感じがして、急に何だかゾワッて背筋が粟立つね。
でもさ、なんとなく、もしかしたらもしかして、死んじゃうかもしれないし、いやそんな大袈裟なって、思うけど、でも嘘じゃないよ、多分、誰かにとっての本当かもしれないし。
世界が明日終わるとしたらどうしますか、って、きっと今日みたいな日に聞いたらちょうどいいんだろうな、世界滅亡のデモ版、みたいな感じするじゃん、台風とか、震災とか、きっと世界が終わる日は戦争よりももっと短絡的に終わるよ、一瞬で。

 

世界が終わる日は、私的予想だと自然災害だろうと思う、やっぱりさ。
もっと大規模の、急激な地殻変動とか天候変動とか、それか惑星とか墜落してくるんだよきっと。
で、それって大体の天文学者とかそこらのエライ人が言い当てるんだよね、何ヶ月か、年単位かもしれないし、でもこのままだといついつに地球は木っ端微塵です、って。
そしたらこれもまたどっかの開発者がさ、避難用のシェルターとか作るわけ、火星に逃げ出す人も出てくるわけ、でもそれに乗れたり入れたりするのは本当のお金持ちと、IQいくつ以上の優れた人材とか、人間国宝みたいな人とか、スーパースターだったり有名な作家だったり次世代の発明をする科学者だけで、それは俄然私には関係のない話なんだよ、ニュースではやるかもしれない、有名人のあの人がシェルター入りです!とかって、でも大概さ、そんなのは違う世界のお話に聞こえて、だから、大抵の人は、それを聞いた直後から期限付きの人生を送るんだと思う。

 

そしたらどうするだろうね、それが一週間後のお話だったら多分今日みたいにスーパーから食べ物が消えるよ、それでもう全部のお店が閉まりだす頃にはお金の価値がなくなってるかもね、なのにパチンコ屋だけはやっていて打ってる人がいたり、ゲーセンかドンキに屯してたり、それでももしかしたら学校や仕事がある人もいるのかもしれない、犯罪とかで罰されなくなってるかもしれないし、逆にそのお陰で規律が厳しくなってるかもしれないし、でもどうせ一週間後にはみんな死ぬんだろって発狂する輩が現れるかもしれないし、それがニュースに取り上げられてインタビューを受けている近所のおばさんは少し嬉しそうかもしれないし、だけど明日の晩ごはん何にしようかって考えるかもしれないし、ポストには定期便のサプリメントが届くかもしれないし、でもみんなジョークみたいに口を揃えて言うんだよ。あ、もう一週間後には世界がなくなってるんだった、って。

 

そんなときにさ、どうするかなって、考えてたよ。
今日みたいな日にスーパーに買い急ぐ人はきっと世界が滅亡する前にもおんなじような行動するだろうし、逆にこんな日でもパチンコ打ちに行くような人は世界が滅亡する日でもおんなじようにしている気がする。
私はどうするかなって、考えて、だけど、一人は嫌かな、誰かといたいって思うかもな、それでいて、ぱっと安否を心配するのに思い浮かぶ人がきっとその一緒にいたい人で、それで死ねたらいいやって、同じようにお家でご飯食べながら、逃れようのないものを静かに受け止めるかもな、だけど不安になって一瞬だけテレビつけて、あと何時間です、ってタイムリミットを聞いて、怖くなって消して、この前見た映画の「火口のふたり」みたいな感じで取り残されたふたりぼっちを只管に底無しに貪ってると思うんだ。
そうなれたなら、ストーリーブックエンディングにはなれないけど、私たちだけのハッピーエンドを迎えられるかもしれない。
それで、それは多分、みんな、そうしたいしそうするんじゃないかなって、最後くらいって、みんな抱き合って眠るよ。

 

それを、私は今、雨音だけが響き渡る部屋の隅で丸くなりながら考えてる訳で、こういう日は、ちょっとだけ怖くて寂しくて、物事の整理がつかなくなって、頭の中ぐちゃぐちゃで余計悲しくなっちゃって、何も聞こえないから何でもないふりして泣いてしまえて、だからこそいつもよりずっと愛する人を愛せるようになるね。

 

さよならさんかくまたきてしかく。
しかくはこの部屋またきてふたり。