脳がない!

カリソメの体でしか生み出せないものたち

海の家と神隠し

夢でよく行く場所がある。

図書館のような、美術館のようなその場所で、決まって母や祖母、叔母と行くのだけれど、いつも帰りはひとりになっている。

誰かに連れ去られたと私は思うのだけれど、誰に連れ去られたのかも分からない、神隠しのようだと夢の中で思って目が醒める。

 

先日、久々にフェイスブックを開いた。

好奇心で調べた父の名前で、検索は見事にヒットした。

満面の笑みでお猪口を持つ、記憶より遥かに老けた父の顔写真がアイコンだった。

小さい頃はよく家族旅行に行った。

小学生の時に行った海で食べた牡蠣の味は、苦かったけれど、美味しそうに繕って食べたのを覚えている。

その海で買ったガラスのイルカの置物は、今も実家に置いてある。

楽しい人だったに違いなかった、よくゲームをする背中を見ていた、漫画を買ってくれた、それでも自分に順じない事をされるのを嫌がる父が、厳しくて怖かった。

 

夢にみる、家族写真に父親はいない。

だから神隠しにも当然合わないはずだ。

いつも行く図書館か美術館か覚束ない場所も知らないし、最近食べた美味しい牡蠣の店にも一緒に行くことはない。

ただ、たまに、母から、あんたの父親から連絡きたよ、と、ラインを貰うきりだ。