脳がない!

カリソメの体でしか生み出せないものたち

Bella mia fiamma

腹が減って極限を迎えた頃にはもう動く事すらままならないように、究極地を突破した思考の末には、誰かに頼るとか、声を上げるとか、人に伝えるとか、そういう限界点をとうに超えているから、死に至る病。 即ち絶望。 こうして何らかを発している内はまだ元…

現実は小説より奇なり

今日は最悪だとか、良い事なかったとか。 周りは結婚し出しているし、同期はそろそろ仕事が上手い具合にいきそうだとか、何が楽しいのかキラキラした写真ばかりを見せびらかしたりだとか、ところでいきなり夢語り出すドリーマーだって、主張を拡声器で響かせ…

兎と亀

童貞か処女をプレゼントしたら、クリスマスツリーは乱反射して聖夜の灯火。 マカロンで包み込まれる程度の愛に、丁寧な個包装、ムカつくリボンのラッピング。 白い光は眩しいから、感情の起伏がままならない、ついてゆけない。 拍手喝采より、ふたりぼっちが…

毒牙にかかる

「本当に死にたくなったら殺してあげるよ」 そう言われたことが決定打になって付き合った彼女がいた。 結局彼女とは遠距離だった所為もあって疎遠になり、私は殺されることもなく、彼女を犯罪者にすることもなく、今までを生きてしまっている。 ついぞ私は彼…

海の家と神隠し

夢でよく行く場所がある。 図書館のような、美術館のようなその場所で、決まって母や祖母、叔母と行くのだけれど、いつも帰りはひとりになっている。 誰かに連れ去られたと私は思うのだけれど、誰に連れ去られたのかも分からない、神隠しのようだと夢の中で…

通行人のフリをしながら

マスクが表情を枯らしたときに、寂しい時代だと言った。 お気に入りの本を貸した、それっきり返ってこないけれど、いつか会うための口実に残しておこうと、大好きな本は大好きな人の手に渡ったまま、新品を買わずにいる。 さよならも言わずに、きっともう会…

地面に降り注いだ金木犀の花束

雨の匂いに混じって、金木犀の匂いが流れてきた。 黄色い花は足の裏に浮いていた。 半袖の上からパーカーを羽織って、寒さに気付かないフリをしていた。 幸いにも凝視しなくても大丈夫だと猫の鳴き声が告げていた。 近所のコインランドリーはカラフルがぐる…

ミスター

僕の見た夢は、遠ければ遠い程それはそれはよく光った。 冷たい夜空によく似合った。 伸ばした手の先に掠めるものは何も無かった。 矛盾か。 果ては暗闇か。 死にたさレベル10の僕と、生きたさレベル50の君。 ドーナツひとつ分程度で満たされる欲求だった。 …

追伸、あなたは喪失の淵で何を見ますか?

拝啓、お元気ですか。 今日も順調に、だめだったり、だめじゃなかったりしてますか。 それでいて、元気?って聞かれたら元気じゃなくても元気って答えて、大丈夫?って聞かれたら大丈夫じゃなくても大丈夫って答えてますか。 最近の空は調子が良かったり悪か…

落日

折角写真機で撮った写真は、ひとつのボタンの掛け違いの所為でぜんぶぼけて映っていた。 揺らめく残像がエモいね、なんて、そんなエモーショナルさは君を前にしたら無力だ。 散りばめられた蝉の死骸の断片で、安上がりな笑顔のまま御託に並べる。 夜の照り返…

真夏の水槽

だんだん、疑問に思わなくなっていく。 なんで、とか、どうして、とか、思わなくなっていく。 順応してって、壊れないように、崩さないように、丸め込む。 忘れていく。 何を疑問に思っていたのか、何に対して儚く絶望を抱いていたのか。 小さい夜が幸せだっ…

もぐ

この間、焼肉食べに行ったんですよ。 本当に美味しかったんですけどね。 好物って聞かれたら、きっとそれ以上に好きなものいくつも出てくるし、ランキングで言ったらトップ10にも入ってないんですよ、焼肉って。 うどんとか、パスタとか、そっちの方が断然好…

私は母にはなれない

急ブレーキを途端にかけたときに制する左腕。 自転車は得意ではなかった。 毎日送られてくる一文。 冷凍食品の味が不味い。 花壇の花にはいつ水をやってるのか知らない。 いつものメニューにレシピなどなかった。 私はニュースを見ない。 一人暮らしをするま…

脆弱性

自粛期間って、決して悪い訳ではないよね、人と会わなければ人から嫌われる事もそれに怯えることもなければ、自分が何かの過ちで人を傷つけてしまうこともないのだから、と、ネガティブ信仰者は申していた。 この点、確かにそうだとただ頷く。 爪弾きにされ…

錯綜

昔から、一人遊びが上手だったので、誰に会わずとも、どこに行かずとも、案外悠々自適な生活ができてしまうから、淘汰された挙句に、結局必要だったものはほんの少しの手に握れる程で、大概が、娯楽か、暇を持て余したか、ちょっとの気分に揺れ動かされただ…

晨星落落

街から、あらゆる光が、ぽつぽつと消えた。 あそこの店、潰れたってよ、だからって、助けてやれる預金はすり減っていくから、誰ともすれ違わなくなったし、他人のフリを極めた住人は皆、視野狭窄になって、小さい事で激怒している。 高圧的な態度のオジサマ…

今、伝えなければならないこと。

毎日コロナ、何処行ってもコロナ、コロナという言葉がそろそろゲシュタルト崩壊しそうです。 今、この時期に、ここで何を書くべきか、しばらく考え倦ねていた。 本来、あまり具体的なことは書かないようにしている。 あまり、具体性を持たせて分かってしまう…

COCOA

最近君を想ってよく泣くよ。 寂しくて、帰ってきているのか、もしくは、私が寂しいだけか。 思い出す事の重ね重ね、それでも最期の日の記憶は今でも蓋を閉じている。 苦しいものね、それ以上にしんどかったろうね。 君にとって良い人ではなかっただろうと思…

見えない敵より

電車に乗った隣の女の人が通りかかった中国人に対して、やだぁ、怖いわね、ウイルス撒き散らしているかもよ。 その人が持っているかどうかすら分からない事情をつらつらと音声に乗っけていた。 こうしてきっと、風評被害は生まれてきたんだろうし、ありもし…

フェイクニュース

昔、憎いと思っていたあの人や、ぼんやり好きだなぁと思っていたあの人が、今日も変わらず見知らぬ何処かで生きているという事実。 そのそれらが何となく愛おしいと思う。 何れ消え行く消え去る命とりどりの縁そのものに、なして生涯永遠と名付けることが出…

きっと僕らは歪んでいた。 そしてそれに気づかずに、1Kの一室に寝転んでいた。 その補正のかけ方も分からないし、きっととんでもなくそれだけで世界が構築されていた。 ひとこと、言ってくれたら良かった。 そのひとことの為にたくさんの時間と精神が犠牲に…

SAI 〜私達はどう生きるか〜

暫くずっと、書かないようにしていた、それは、時間的猶予の無さが半分、故意的にそうしていたことが半分。 それは、少しだけ、何かを伝えるだとか、考えを述べるだとか、そういうことについて、不安を抱いたからだ。 ずっと、誰かを、何かを、好きと言うこ…

満天の

君との捩れた感情は、僕に燻った正しさを植え付けるには十分だった。 久しぶりに会ったあの子に、何となく変わったねって、あぁそう、例えば昔はもっときたない笑い方してたよ、って、言うのと同じくらい私だってきっと何かと変わっている。 肯定してあげた…

世界滅亡デモンストレーション

台風の所為で、なのか、お陰で、なのか、明日の仕事が休みになりました。まぁそうだよね、そもそもこんな台風の中、病院に自らの足で来る患者さんなんて、もうそれ元気だよ、と思う。だからといって、突如として仕事が休みになったわけで、急遽降り注いだ三…

うそばかり

君の流行はぜんぶ、大好きな人の所為なのね、って、フォークソングがパンクロックに変わったりしていた。 流れる芸術性に、感動なんかしない。 昔、マイセンで焼き切った肺で、今は別の銘柄を吸っているのだろうか。 骨董品の肌で人肌恋しいと言っていた。 …

墓場の匂いがする

何をするでもなく頭の中を通り過ぎていく言葉たちに愛想を尽かして、もしかしたら形になっていたかもしれないものたちを風に揺らめかして流す。 僕は君の何にもなれなかったよ。 大切にしていた宝物だって、君から見たらガラクタだろうし、端から見たら可笑…

橙色

夏の終わりと同時に線香花火を買った。 突き抜ける焦燥感。 何に追われているわけでもなくて。 たったひとり私だけがこの空を見ているのではないかという茜色。 思いっきり坂を駆け上がったろうか。 一目散に水辺に飛び込んだだろうか。 きっと君は真っ昼間…

誰かを嫌いと言う、その速度と理不尽さが好きだった。 同じくらい、誰かを好きになる時でさえも理由なんて些細で、そんな理由付けをする必要性も、説明できるだけの言葉も持つことなく瞬く間に心臓が急接近する。 恋に落ちるとは言い得て妙だ。 そしてそんな…

FREEFALL

思考が病んでるよね、とか、言葉がネガティブだね、とか。 よく言われるのだが。 楽しい事はその場で既に完結しているのに、何を書く必要がある? 精々インスタにハッシュタグつけて投稿して、ツイッターに楽しかった、また行こうね、と絵文字だらけの呟きを…

好きなものを好きと言えないままに好きでいることを愛でたらいい

他人は承認欲求を満たすための道具じゃねぇぞ。そんなにその他大勢の不特定多数にかわいいね、大丈夫だよ、必要とされてるよ、なんて言われたいと思うくらいなら、私だったらペットでも飼ってムツゴロウする。そんなことよりも結局のところ、伝えたい相手っ…