脳がない!

カリソメの体でしか生み出せないものたち

おとなこども

同じ嗜好で知り合った女の子が個展を開いて、髭が生えなくて悩んでるロン毛の野郎が自分の曲を売り出してる間、私は世界をきっと嫌いでいる。
生命感の溢れる人ほどフィクションに見える感覚。
一時間半で変わる同じ景色をあと何回見たら、私の世界を好きになれるのか。
まして、退屈な寝床への帰路ほど目に見えて憂鬱なものはないね。
飛んで火に入るのは夏の虫だけではない。

 

もう秋もそこそこだっていうのに、夏の死骸が散らばっている、そんな抵抗。
夏の終わりが好きなのは、2℃上がった体温を心臓が締め付けるから。
アイスの棒が肉まんの紙袋に変わった頃にはもう冬だ。
何が言いたいかっていうと、もう帰路が寒い。
渦巻く都会も足音がかたくて冷たい。
だけどその音が知らん振りで心地好かったりする。
みんなそうだったらよかった。
流れてくる音楽がもう永遠に聴けないものだったら純粋に素敵だねって言えたし、すれ違う人の名前を知らなかったら好きになんてならないで、綺麗だねって言えたのに。
私のこと嫌いでいいよって言えなくちゃ、優しい人にはなれないらしい。
どんな悪意も、慕われる人が言ったら肯定できるって、知ってて沈黙してるのか。

 

脱け殻みたいな大人に尊敬されたい。
さよならをきれいに言えなくていいから、死なないと辻褄が合わないと思ってる言葉を愛したい。