夏の終わりに
田舎の一駅は東京の三駅分程です。
もっと田舎に行ったら車両が減ります。
猪が電車に突っ込んで遅延します。
ホームで高校生がカバンを地べたに広げても誰も文句は言いません。
別れた母は一人で広い部屋。
私は帰ります。
一緒に暮らせば水と油でしたが、今なら涙を流して溶け合います。
だけれど私は帰ります。
家に三万円だけを残して。
人間は、存外に死にやすいことを忘れています。
その定義があるから生きられるのでしょうが、空はいつも遠いものです。
毎日を生きるためだけに、営みが繰り返されてゆきます。
せめて、田舎の一駅分を長いと感じる前に、私は、ただいまと言いたいものです。