免罪符
本気で守りたいものとか、自分より大切な人とか、命にかえても突き通したい事や手にしたい何かがあったら。
安心して愛せる人がいたならば。
もっと懸命に生きられるのかもしれなかった。
後ろ盾なんてものが存在しないから、いつ終わってもいいと感じているこの身ひとつで。
金を貯める意味も、明日に備える意味も、健康でいることとか、大事をとって眠ることとか。
私の為だけでしかないから必死になれない。
天秤にかけたって釣り合わない。
明日が輝ける未来を生きてる人がフィクションに見えるのは今でも変わらない。
結局最後は自分が楽しんで満足したもん勝ちだよとか言うけれど。
どんな自己啓発本を読んだって同じことが書いてある。
頭では解っていた、それに心が伴わない。
色即是空。
昔好きだった人が唱えた言葉。
未だにそこに達し得ない。
言葉は簡単で、時折それが無力に等しいから轍を犠牲にすることに躊躇しない。
明日悲しむ誰かのために生きようとするより、今我儘を言える誰かがいないから死のうとする方が現実的。
それでも、なんでか、ひとりで生きられるって虚勢張って、代わり映えしない明日を過ごす。
今日より明日がいい日であるようにと生きられた今日はどんな心持ちだろうよ。
一挙一動でざわつくその安い感性をどうにか昇華したくてこうして言葉にするわけだけれど。
何一つ変わらない。
ただ、有限な時間だけが過ぎて逝く。
確証なんて自分で得るしかないのに甘ったれた思考回路で卑下する孤独感を持て余して伸ばした手は空を切る。
生まれ変わったらだから、誰かの単細胞になりたいわけさ。
キスの安売りなんかしてる場合ではないぞ、馬鹿たれが。
そんなこといったって、きっと明日も明日を模索しているんだろうな、死なないままで。