脳がない!

カリソメの体でしか生み出せないものたち

村人A

透明度の薄い人生だからって、ひとつも寂しくなんてなかったし、ひとつも悲しくなんてなかった。

主人公の喜怒哀楽ほど現実味の薄いものはなかったし、ストーリーブックエンディングみたいに綺麗に終わることもない。

彼らの物語に終わりは来るけれど、私の終焉なんて見えないし、それが当たり前で、それでもパッタリ何かを失う事もあるから侮れない物語。

恋始めました、なんて言葉に出すこともなければ、失恋しましたと前を向くこともない。

親愛なる友人の為にと手広く使えるツールだけでは物足りなくなったり、虚しくなったり、それでいてややこしくなったり面倒を伴ったりするから、その所為で誰とも繋がっていない場所へ逃げたくなる。

毎日何かしらの事件が起こる日常ではないし、ルーチンワークだけが目の前に広がっていた。

同じことを繰り返す、繰り返していたらあっという間に1日が終わっている。

だらしなく帰路を辿れば小汚い自分が鏡に映るだけだ。

絶望は絶望のままだし、そこから立ち直ることなんてないし、切り離すやり方もずっと見つからないまま、傷を癒やす方法さえ持ち得ていないからその痛みと共に生き続ける。

私を虐め抜いた環境が、めでたしめでたしと一転することなんてもちろん少ない。

ダメな部分さえ好きならきっと、その人を嫌いになることなんて一生ないから、好きな人を好きなままで忘れることもないままを心に鈍痛を持続する。

生きていたらその分だけ持病が増えていく。

縁が絡んで離れて切れて縺れてもしかしたら首を絞めにかかるかもしれない。

それでも飛んで会いたい誰かとか、時間を割いても声を聞きたいあの人だとか、大切な存在だとかの為に、各々の器で抱き締めている。

殺したいくらい人を妬んだり恨んだり嫌いになったりすることもあれば、殺されてもいいくらい人を好きになったり愛したりすることもある。

迷惑かけて傷つけて、自分を嫌いになっては泣いて泣き止んで、見上げても地獄だったりする。

リセット機能もやる気スイッチもセーブポイントも存在していない世界で後悔に生き地獄を重ねる。

それでも時たま誰かに愛されていると自覚したり、居場所を見つけて歓喜したり、見えず心に残る存在に感謝したりする。

 

だから、どうせ、人生最高だって。