音速で逃避行。
一緒になって逃げようか。
私のいない東京なんて興味ないでしょ。
鞄一つも持たないで。
なくて困るものなんてこの部屋にはきっと何もない。
焼かれたってちっとも悲しくない。
何を思ってサボテンを育てていたのか知らないし。
よく流れていた洋楽の歌詞の意味も分からないし。
ベランダの植木は枯れてるし。
それとも君は手に入らないから美しいの。
都合のいい部分しか掬い取らないくせに、容易く優しくなんかするなよ。
たまに無駄なことをしたくなる。
喫茶店で頼んだパフェを半分も食べずに残したり。
わざわざ出向いた渋谷で何も買わずにどこにも寄らずに帰ってきたり。
一日中、風に揺れるカーテンを眺めていたり。
それから、そんななんでもない日のことを思い出して、そんななんでもない日に思い出す君のことを思い出して。
だけど、隣にいない、いないでしょ。
寂しいよ、溺れた夢。
慰めの言葉一つさえ、持ってないんだから。
私は君から貰ったタバコ一本、手放せないでいる。