脳がない!

カリソメの体でしか生み出せないものたち

橙色

夏の終わりと同時に線香花火を買った。

突き抜ける焦燥感。

何に追われているわけでもなくて。

たったひとり私だけがこの空を見ているのではないかという茜色。

思いっきり坂を駆け上がったろうか。

一目散に水辺に飛び込んだだろうか。

きっと君は真っ昼間の煩わしさを知らない。

そして私は流されるままに疾走していたはずだ。

夏はお嫌いですか。

少しくらい、火傷したって直ぐに治るはずなのに。

肌が焼ける音を聞いたことがあるか。

何度心臓を失えば気が済むのだろう。

そうして毎年、侘びしさに暮れて蜩の鳴き声を聞いている。