脳がない!

カリソメの体でしか生み出せないものたち

僕の楽園

「あんまり死ぬのを怖がるとな、死にたくなっちゃうんだよ。」

テレビから流れる夏の海と拳銃。

沈まっていく生と死の彼方に、赤い花弁を散らつかせた。

ソナチネ」が公開された年に、私はまだ生まれていなかった。

 

ある人は、人が欲している言葉を発して生きろと言う。

またある人は、守るものがないやつの信用なんかできるかと言う。

愛の死、同情の死、くたばってしまった感情の死。

背負いきれないから、すべてを諦めて逃げ出したくなる。

燃え盛る炎を横目に、海に飛び込みたくなる。

己さえをも信じられなくなってしまうから、焼ける喉を掻っ切ってしまいたくなる。

ここではない、ここではないけれど、どこに行ってもずっとずっと同じだ。

お前じゃない、お前じゃない、お前なんかじゃ糞の役にも立たない。

気持ち悪い、近寄るな、ぶつけられた感情で凹んだ臓器。

期待して、望んで、偽りの握手をして笑っていた涙。

人の背中に刃を立てて、保身、安全圏、もう見ないでくれ。

もう僕をその目で見ないでくれ。

 

それでも私は、君が茹でたパスタがザルをすり抜けて排水口に吸い込まれたとき、泣きじゃくっていたのを知っている。

冷たいシンクで、掬い上げることもなしに、泣きじゃくっていたのを知っている。

そうしてひとりぼっちで、どこまでも舌の先を血だらけにしたのを知っている。

夢の先で、頭を打って死んだサンダンカ。