脳がない!

カリソメの体でしか生み出せないものたち

情報網

明後日の方向を向きながら、古本で買った太宰治を読んでいた。

行間を読む能力が欠如した果てに、結果ばかり先走って、結局それでって聞くばかりで、分からないでいる選択をしたものから問いかけられている事を解かろうとしない。

で?だから?結局なに?

どうせ説明文さえ読もうとしない癖に、矢鱈と情緒に欠けた台詞が連なる。

それでいて最近の映画館ではスマホの光が植わっているらしいから品のないイルミネーション。

 

忙しい忙しいとコンテンツばかりが増え過ぎて、追われるのは仕事や締切だけではなくなって、娯楽にまで後ろ手煽ってきた。

圧倒的に駆け回っていく流行とスライド操作で流されていく視覚に対して、ひとつに費やす時間が足りていない。

あれも見なきゃ、これもやらなきゃ、だから映画もエンドロールだけで見た気分になって、本も後書きだけ読んで感想文を書いている。

その割に何もない休日に限って、温い布団と友達決め込んで、動かないと期した怠惰を許している。

 

かく言う私も母から届いた「今皆既日食だよ」のラインに既読をつけただけで、空も見上げずに、囲まれたビルと目に痛いほどのヘッドライトを目前にただ寒さを耐え忍んでいた。

メンタル・ギャル

嫌なことがいつあってもいいように、ポッケの中にチロルチョコを忍ばせとけ、ってエッセイを読んだことがある。

私はチロルチョコの代わりに心にギャルを飼うことにした。

金髪のルーズソックス。

キティちゃんサンダル履いて、パンツ見えそうなくらいのミニスカ。

冬はその下からスエットが除くけれど、だいたいドンキの常連客。

携帯のストラップは本体より重いし、裏にはびっちりプリクラ三昧。

重力に逆らったつけまは命のポーチ片手に。

友達と笑い合ってたら最強。

何にだってなれる。

どんな理不尽も蹴飛ばして。

これ以上強いものなんてない。

そんなギャルを心に飼うことにした。

一生なれやしないから、心にだけはそっと住まわせておく事にした。

僕の楽園

「あんまり死ぬのを怖がるとな、死にたくなっちゃうんだよ。」

テレビから流れる夏の海と拳銃。

沈まっていく生と死の彼方に、赤い花弁を散らつかせた。

ソナチネ」が公開された年に、私はまだ生まれていなかった。

 

ある人は、人が欲している言葉を発して生きろと言う。

またある人は、守るものがないやつの信用なんかできるかと言う。

愛の死、同情の死、くたばってしまった感情の死。

背負いきれないから、すべてを諦めて逃げ出したくなる。

燃え盛る炎を横目に、海に飛び込みたくなる。

己さえをも信じられなくなってしまうから、焼ける喉を掻っ切ってしまいたくなる。

ここではない、ここではないけれど、どこに行ってもずっとずっと同じだ。

お前じゃない、お前じゃない、お前なんかじゃ糞の役にも立たない。

気持ち悪い、近寄るな、ぶつけられた感情で凹んだ臓器。

期待して、望んで、偽りの握手をして笑っていた涙。

人の背中に刃を立てて、保身、安全圏、もう見ないでくれ。

もう僕をその目で見ないでくれ。

 

それでも私は、君が茹でたパスタがザルをすり抜けて排水口に吸い込まれたとき、泣きじゃくっていたのを知っている。

冷たいシンクで、掬い上げることもなしに、泣きじゃくっていたのを知っている。

そうしてひとりぼっちで、どこまでも舌の先を血だらけにしたのを知っている。

夢の先で、頭を打って死んだサンダンカ。

死人に口なし

チケット2枚分でお一人様。

なんたって、広々使えるし、荷物だって、置けちゃうし、別に、寂しくなんて、ないし。

青空天井のガチャみたいな、そんな、運試し。

おはよう、今日の運勢は空模様、黄色のハンカチで良いことあるかも。

だから、そう、会えたらラッキー、くらいの心持ちで。

傷付きたくない傷付けたくない何でもないよだって変わらないいつもが今日も巡るだけ。

これといって、底の見えてる恋愛とか、区切られてる感情とか、見え透いた取引とか、わかり易い対価とか、面白いとは思えない癖に。

だからきっと、愛想を買おうとも思わないだろうし、豪華な手札なんて持ち得ないだろうし、よそ行きの格好でプレゼントされたって、それでフェアでしょなんて気にさせない。

0か100かしかなかった、だからその中間が存在していない。

すべてを抱えて渦中にいるか、燃え尽きる迄黙って眺めているか、選べもしないから生意気言ってる。

君の中では合ってない辻褄も、私の中では合っているからそれでいい。

この延長線上の何を手懐けようとしているのか知らないけれど、言葉は既に手放したから、物語らぬ喉、バイバイ笑って彼ノ死装束。

砂時計

膝を丸めて本を抱えた。

何を犠牲に支払ったか君よ。

何を犠牲に何を得た。

何を天秤にかけて何方を選択した。

渇く、それでも、渇いている。

飢えているのか、枯渇しているのか。

不平等に、残酷に、嘲笑って。

知識ばかり得ていたって、世界はひっくり返らない。

極楽浄土を目指したって、果てには行き着かない。

まして、地獄にいるなら愉快なものだ。

何も変わらない。

すべて有限だ。

そして、どうしたって、私は私だ。

不公平に、不平等に、手にしたものは、砂に化したって。

つまらなく着飾るより、ふんぞり返って笑うだけだ。

本棚

平行でない仕切り。

重さに耐えられなくて歪んだらしい。

陥没するのも時間の問題だった。

苛々させながら自慰行為。

捌け口を探していた。

感情にはじめまして、みたいな、質素な食事。

とうとう人間を手放したらしい。

頭でっかちにばかりなっていくから、隔壁された白の下で右手だけを消費する。

消耗されていく。

これから生きていく中で今が一番若いってのに、どこにも行けず、何にもなれず、体はずっとぬいぐるみの綿みたいに漂っている。

あーだのうーだのしか言わない機械人形。

よくも笑っていられたな。

木漏れ陽

宇宙から自分を見下ろした。

何の味もしなかった。

夜の海は映えると思う。

少しの寒さが心地良いから燃やした炎を投げ捨てる事にした。

期待しない、期待しない。

何を言っても無駄だから、そんな労力使ってやらない。

私の発言は、私の発言が求められている、聞いてくれる場所ですればいい。

そんなことより多分生肉を食べるのに忙しないから。

足跡を残した証拠を見つけるのに勿体ぶってるから。

どうしようもない。

ここでなくてもいい。

組織に依存する事ほど惨めなことはないね。

誰に何を思われなくてもいい。

私の静かな台詞に寄り添う細やかないくつかの添え木があれば。

私は木陰で休む事ができよう。

あとはぜんぶ、まとめてぜんぶ、海の底に沈めてきたって。