サボテンの花
レシートの裏に走り書きされた「牛乳、卵」の文字。
598円相当の愛情。
干された洗濯物ごとカーテンが揺れていた。
不器用なりのサボテンの育て方。
水だって腐るってことを知らないみたいに置かれたペットボトル。
かつて花瓶だったそれにはパスタが生けられていた。
増えた歯ブラシの分だけできた小さな傷。
大事なのは明日回収のゴミの種類。
グラスの中の氷が溶けるまでに交わされた会話は二言三言だった。
その間に私は、年下に師を持つことの大変さと難しさを熱弁していた年下の別の横顔を思い出していた。
流れに沿って歩いていれば、下を向いていたって誰にも当たらないからベルトコンベアーの部品みたい、って通勤ラッシュを逆走していた遠のく君は、雑踏に紛れた。
私はそれを見つけられないままに踵を返した。
きっと、同じ窯の飯をずっと食っていく、ような確信。
それとなく窮屈に思えて、こうして何かしらの未来への約束をしていくみたいな、ちょっとだけ老けた気がして退屈だった。
君に、尊敬を持って、私は花を添える。
溶けた氷をずっとかき混ぜるみたいに、途方もなく。