俯瞰
意気込んでいた事象や、待ち望んでいた出来事が、過去になる度に少しずつ死んでゆく心臓。
どれくらい削り取られれば、“私は何者か”を形成できるのか。
未だにその削り華を崩れないように忘れないように、穴の空いた思い出の木箱に入れ続けているというのに。
寂しいとか悔しいとか思ったところで、それらを手探りでひっくり返している内に底から抜けていってしまう、元から永遠なんかを想定して作られていないこの躯。
意志と無関係な事象で手放さなくてはならなくなるのを恐れて、だったら自らの意思で終わらせようとする愛情の裏返し。
大きすぎてしまうと逃げたくなって、その癖それらがいつまでも逃げようとする私を追いかけてきて力尽くで捕まえてくるのを望んでいたりもする。
意志と背叛している態度をそのままに、嫌だ嫌だと言い喚き続けている。
しっぺ返しにあったら手先の力も入らぬ癖に、それでも許してくれるという確信に対する過度の甘えである。
何者でもなかった私という物質が、ここで生を全うしていることで奇跡を見た気になって、やりたい事とやらねばならぬ事の相違にずっとこの身を割いている。