脳がない!

カリソメの体でしか生み出せないものたち

2022-01-01から1年間の記事一覧

俯瞰

意気込んでいた事象や、待ち望んでいた出来事が、過去になる度に少しずつ死んでゆく心臓。 どれくらい削り取られれば、“私は何者か”を形成できるのか。 未だにその削り華を崩れないように忘れないように、穴の空いた思い出の木箱に入れ続けているというのに…

爪研

物腰柔らかそうな中年男性が、 自分の母親を連れて病院へ訪れているのを見た。受付のお姉さんに、ありがとうございます、なんて返しながら。彼の、母親にだけ強く当たる姿を見た。違うから、何度言ったら分かるの、いいから、やるから。優しくなりたかったの…

カントボーイ

誰も彼もが夢や希望を追っかけてるワケじゃねぇんだ、うるせーよ。 今、目の前で殴り合いの喧嘩をしろ。 勝った方が正義、負けた方が悪、至極明瞭でわかりやすいじゃないか。 あぁまったく、他人を正しく評価できる能力が欲しいって言った訳さ。 それでいて…

Anser

何かを惜しんで綺麗な言葉を今更並べたって、そこまでに費やした破綻した言葉達の所為で、何一つとして正面から真っ当に伺えない。 哀しみの助力をしたのは、それでいて被害者面して、やれ同情、やれ共感、私だってきっとずっと悲しかったんです。 哀願込め…

羽化

死にたいなんて感情は凡庸だから、それをただ飼い慣らすことに徹する。 態々語るまでも無い、溶け込んでいるものたち。 聞いてない、誰かの深淵なんて知らないし、そんなの当たり前って、下手くそな笑い方で達観などしちゃって、想像力すら及ばない。 読解力…

生を隠蔽、死に馨

私の日常には死の匂いがした。 この人もう死ぬんだろうなって言いながら昼飯を食っていた。 霊安室の隣のトイレで大便垂れ流して、大丈夫ですかって体裁だけで機械音みたいに発音して、痛いって言葉をへぇって笑ってガン無視している。 死が纏っていた。 そ…

小さな箱庭、夜の燈火。

鏡月のボトルデザインが変わって、僕は体に優しい天然水、みたいな顔をしていても度数は変わらないから、かわいそう、って言いながら肝臓を痛めつける、暴力反対です。 吐き出しているのが、胃液なのかアルコールなのか愛なのか、分からなくなってからが君の…

舞台役者

一般市民、僕は名もない一般市民、害なんて一切ありません。 テンプレートみたいな笑顔。 しっかり貼り付けて「そうだね」って言う。 客観性が失われていく主観の相討ち。 自分本位でごもっとも、誰も自ら泥水なんかにゃ飛び込まない。 勝手ばっかりしている…

解像度ヲ上ゲヨ震エヨ世界

きっと、こういう感情の時に人は怒るんだろうなとか、こういう痛みを感じたときに苦しくて泣くんだろうなとか。 俯瞰的に捉えてどこか他人事で、体外からの刺激と地続きで心臓が寄り添うにしては、余りに楽観的だった。 河川の下流の石のように、幾度も流さ…

死闘を演じる

罵倒として、死ね、などという無粋な言葉を使わぬようにしている。 それは決して汚い言葉だからとか人に向ける言葉ではないから、などという丁寧さから来ているものではなく。 人を傷つけようとするには愚直過ぎるし、そういう意味合いで使うのならば、もっ…

喜 “怒” 哀楽

腹が立っている。 同じ物を何回も落としたりだとか。 机の角に足をぶつけたりだとか。 ほとんど使い切ったトイレットペーパーだとか。 靄って何も見えない雪山で一人倒れても、誰もが存在にすら気付かずに素通りするだとか。 療養病棟で口を開けたまま荒い呼…

最後の君

自由を欲して身から出た錆。 木が生い茂っていて日が沈んでいたから、落ちてくる屑星を掴めそうだったのに、泥濘に嵌って脳が死んでいた。 刃が刺さった鈍痛から内臓飛び散って漏れ出す泥水。 いつ死んでもいいよって君が言ったのに、寸での所で生かして殺し…