まばゆい普通が続いていく
毎日がとても退屈だった。
毎朝決められた時間に起きて、たまに早かったりするけれど、冷凍のご飯をチンして食べて、身支度整えて、余裕があったら二度寝して。
同じ時間の同じ車両に乗れば、何人か見知った他人の顔が並んでいたりしていて、駅について職場のロッカーで着替えを済ませる。
早く終わらないかなって気持ちだけで仕事を乗り越えて、気がつけば定時を過ぎていて、中身のない会話で無駄に笑ったりして、ちょっとだけ上司のご機嫌取りなんてしてみる。
疲れた、ってぼやきながらほとんど無意識の中で帰路につく。
どこにでもいるような、もうそれはごく平凡なモブでしかなくて、だけどそれはきっと誰もが同じだった。
死ぬほど寂しかったり、呆れるほど惨めに足掻いたり、喚くほど傷つけ合ったり、だけど時々誰かを愛しく思って泣いて、満ち足りたりして。
誰かのせいで幸せになったり不幸になったりするのは結果論でしかなくて、幸せになるのも不幸になるのもぜんぶ自分にしかできないって、知ってる。
誰かに許しを請うわけでも、認められたいわけでもなくて、ただ、ただ、愛しさに包まれて眠れる夜を一秒でも長く続けていたい。
冬を越えて、春が過ぎ去り、夏を迎えて、秋になっても、まだ。
ここにいる、ずっといる。
身動きも取れないままに。
どうせいつか死ぬなら、死んでも何も変わらないなら、満ち満ちて死んでゆきたい。
さよならを綺麗に言えなくても、ありがとうを茶化さないで、素直になれる事を慈しめるだけでいい。
ねぇ、どうせ一瞬だよ。
だからもう少しだけ、ここにいさせてよ。