生を隠蔽、死に馨
私の日常には死の匂いがした。
この人もう死ぬんだろうなって言いながら昼飯を食っていた。
霊安室の隣のトイレで大便垂れ流して、大丈夫ですかって体裁だけで機械音みたいに発音して、痛いって言葉をへぇって笑ってガン無視している。
死が纏っていた。
それを当たり前の様に見過ごして、どうでもいいみたいな物として、気持ち悪い汚いって思いながら、一生懸命手ばっかり洗っている。
そこに命の鼓動なんて逐一感じてしまえるかよって好んで死を握りつぶす、嫌いじゃないよって言いながら。
それでも、生きてるって実感がある昨日より、今日の方が日常なんだから仕方がなかった。
足並み揃えて、日を浴びてさよならって言ってる間にタイマー鳴らしているのだから、形だけでも規律を守ってるフリをする。
倫理観なんてゼロだから、嫌いって言って殺してやろうとしていた、隔たりの私。
どうして夢なんて見てしまうかしら。
これでいいのかなんて思いながら、それでも少しでも嬉々とした出来事さえあると、軽率に傾いたりする。
表面ヅラだけの、甘さだけを掬い取った都合の良さを認知して尚、それを夢だと語ってしまう未熟さ。
それでも私は少なくとも、今よりずっと、生きているって、思ったよ。